投稿者:しな子

商品は1番難しい、だからこそ面白い【商品アナリスト】小菅努さんにインタビュー!

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世界でも数少ない“商品アナリスト”である小菅努(こすげ・つとむ)さん。

ご自身が設立された「マーケットエッジ株式会社」の代表取締役社長でもあり、日々、コモディティ(金属や穀物などの商品)市場の展望の分析をブログやレポートなどで発信されています。

今回はそんな小菅さんに、ご自身のご経歴や考え方、そして今後のコモディティ市場についてなど

様々な質問をインタビューしてきました!

 

  • 商品アナリストってどんな仕事なの?
  • 商品先物取引ってどんな魅力があるの?
  • 今後のコモディティ市場はどうなっていく?

 

コロナショックによって、ますます注目が集まるコモディティ市場。

この記事を読むことで少しでも商品先物取引が身近なものになれば幸いです!

 

 

「市場の中でどんな理屈で価格が変動するのか」を分析して発信しています。

 

しな子
しな子
改めまして、本日は宜しくお願いします!
こちらこそ、よろしくお願いします。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
まず、小菅さんの現在のお仕事内容を教えてください。
メインで行っているのは、コモディティ市場についてのレポートの発行です。
他にも講演やメディアなどの業務も行ってはいますが、基本的には、市場(マーケット)を分析してレポートを書くのが主な業務ですね。
小菅さん
小菅さん
レポートの内容は、金や原油はもちろん、プラチナや天然ゴム、穀物まで色々なコモディティの市場を分析して、執筆しています。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
レポートはどういった方が読まれるのでしょうか?
お客様は金融機関や商社、事業法人が多いですね。こういった会社が投資判断をするときの情報としてレポートを買っていただくことが多いです。
商品先物取引業者さんに、営業活動に使う材料としてレポートを購入していただくこともあります。
小菅さん
小菅さん
あとは、商社や石油会社にレポートを買っていただくこともあります。
こういった会社は投資的な目線でなく事業に用いる資料として、私のレポートを購入していただいています。
小菅さん
小菅さん

 

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▲実際に小菅さんが執筆したレポート

 

しな子
しな子
レポートは投資に役立てるだけでなく、事業に用いられることもあるんですね。
どちらのニーズにも対応しているということですか?
そこは受け取り手の問題なんですよね。
「投資家」向けと「事業」に向けで違うレポートを書いているわけではないんです。単純に私のレポートを投資に使うか、事業に使うかの違いだけなんですよね。

小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
投資家だけでなく、多くの金融機関や商社が、小菅さんのような“商品のプロ”が発信する情報を頼りにしているんですね。それこそ商社や石油会社などは専門的な知識を持っていそうな気がしますが、意外とレポートに頼っているところもあるんでしょうか?
もちろん、商社や石油会社は現物(原油)についての知識はプロです。実際、私が知らないようなこともたくさん知ってます。ただ、「コモディティ市場、つまり投資の世界で原油がどうなっているのか?」というのは業務外であることも多いんですよ。
小菅さん
小菅さん
石油会社に限らず、多くの金融機関や商社は、トレードが上手い人は多く抱えていますが、「市場価格がどんな理論で動いているのか」まで分析している人は、少ないんです。だから私のレポートを利用してくれるのだと思います。
小菅さん
小菅さん

 

コモディティの世界に入った、これといった理由はないんです(笑)。

 

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しな子
しな子
小菅さんが「商品先物取引」いわゆるコモディティの世界に入った理由は何だったのでしょうか?
正直これといった理由はないんです(笑)。大学を出て、たまたま入ったのが商品の世界でした。商品取引員として営業を1年間して、その後、ニューヨークで市場分析を学んでから、日本に戻って商品アナリストとして調査業務をしています。この世界に入ってからのめり込んでいった感じですね。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
ニューヨークでコモディティ市場分析について学ばれていたんですね。
海外へ行くきっかけは何だったのでしょうか?
昔は日本の金融機関でも、ニューヨークに事務所がある会社が多かったんです。
とあるブローカーの方に伝(つて)があって、会社の研修プログラムでニューヨークに行ったのがきっかけです。
小菅さん
小菅さん
当時は2001年で、ニューヨークでは※9.11同時多発テロ事件が起こった直後だったので、会社からは「行かなくてもいいよ」と言われていたんですが、
その人のところで勉強しようと決心してニューヨークに行きました。
小菅さん
小菅さん

※2001/9/11にアメリカ合衆国で実行された、イスラーム過激派テロ組織による4つのテロ攻撃の総称。

 

しな子
しな子
ニューヨークでは具体的にどのようなお仕事をされていたのでしょうか?
はじめは※市況の分析をしていました。今でこそ先物市況を表すものってたくさんありますが、当時はインターネットも全然発達し始めの段階で、情報ベンダーでさえ市況について書いてあるのは2行とか(笑)。そんな感じだったんです。
小菅さん
小菅さん

※株式・商品などの売買される状況。市場の景気。

市場が開いたとき(オープン)から閉まるとき(クローズ)までの市況を細かに分析して、レポートを書いたりしていました。当時、先物市況を細かく分析する人は国内にはあまりいなかったので今思うと所謂“はしり”でしたね。
小菅さん
小菅さん

 

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しな子
しな子
なるほど。当時はかなり先進的なことをされていたんですね。
商品先物取引の“先駆け”と言いますか…。
当時の日本では、株や為替なんかはレポートが出ていたりしたんですが、コモディティではあまりなかったように思います。それどころか、当時は分析の仕方すら分かってなかったんですよ。その方法を教えてくれる人もいなかったんです。
小菅さん
小菅さん
アメリカにはコモディティ市場分析の教科書のようなものがあったので、1つずつ理解して分析をしていましたね。学んだことをレポートにして発信したりもしてました。それでなんとかアナリストっぽくなれたかな、みたいな(笑)。

小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
今でこそコモディティ市場の分析について学ぶ環境が整っていますが、当時はそうではなかったんですね。それ以前はどうやって先物市場の動きを予想していたのでしょうか?
そういった基盤が出来る前は、多くの方が、コモディティを「市場」ではなく「相場」で見ていた気がします。テクニカル指標でチャートの形だけで値動きの予想をしたり、「あそこの商社が買ったから上がる」とかね。
それって、コモディティを「相場」としか見てないんです。
小菅さん
小菅さん
でも、コモディティの世界にも「市場(マーケット)」がありますよね。需要と供給と在庫があって、それに基づいて価格が変動する。それをきちんと分析して、コモディティの世界を見ることが必要なんじゃないかな、と考えたんです。
それで、先物「市場」の分析を始めたのが、私たちやそれより少し上の世代なのかもしれません。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
コモディティを「相場」ではなく「市場」としてみることが必要だと感じて、
商品アナリストとして勉強されていたんですね!ニューヨークから帰国した後はどうされていたのでしょうか?
帰国後、商品アナリストとして、名古屋でブローカーの調査室長をしていたんですが、業務の幅に限界が見えはじめたんです。結局、東京で会社を立ち上げて独立しました。そうして今に至るって感じです。
小菅さん
小菅さん

 

商品先物取引の“難しさ”こそ、商品先物取引の“面白さ”なんです。

 

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しな子
しな子
商品アナリストとしてお仕事をする中で、達成感ややりがいを感じるときはどのようなときでしょうか?
やっぱりお客様の反応ですね。法人向けに発行しているレポートが、そこから個人投資家に出回って、反響がよかったときは達成感を感じますね。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
逆に大変だったことや、苦労したエピソードがあれば教えてください。
日本に帰国してからは手探りな面も多かったので、苦労することも多かったですね。
「アナリストとして、どうやって名前を売っていけばいいのか」と考えることも多かったです。
小菅さん
小菅さん
金や原油の分析では知名度が高い人が既にいらっしゃったので、そこで勝負しても無理だな、と考えたんです。他の人が分析してなくて、そこそこ盛り上がっている市場ってなにかな、と見つけたのが天然ゴムでした。はじめは、天然ゴムについてのレポートを書いてブログで公開したりしていました。
小菅さん
小菅さん
そうすると、ブログを見てくれるようになったり、メディアからコラムの依頼が来たりして仕事が増えていきました。露出が増えてくると名前も知ってくださる方も多くなって…苦労もしましたが良かったですね。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
では、小菅さんの考える“商品先物取引”の魅力とは何でしょうか?
逆説的なんですが「難しい」ところです。
商品先物取引は非常に複雑で、そこが何よりも面白いところだと思います。株やFXは価格変動の理論がいくつか絞られていますが、商品の場合はたくさんありすぎるんです。需要と供給と在庫はもちろん、経済的な面、政治的な面も関わってきます。為替のレートも関わってきますよね。
小菅さん
小菅さん
やり尽くせないほどの材料があるところは、やっぱり面白いですね。
いくら勉強しても足りないな~って今でも思います。人にもよるのかもしれませんが、
僕はその点が商品先物取引の面白さでもあると思います。
小菅さん
小菅さん

 

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しな子
しな子
コモディティ市場の分析方法で、株式やFXと違う点はどのような点でしょうか?
例えば株式で自動車関連の株を買うなら、自動車に関連するニュースや動きに注目すればいいですよね。でも、コモディティの場合は違うんです。コモディティ市場の銘柄は、それぞれ関係がないようで連動性があるんです。
小菅さん
小菅さん
例えば、原油取引をするときでも、大豆取引について知っていれば全然違います。
「原油と植物油(大豆)はどちらが先に※ピークアウトするか?」これは、植物油の方が先に動くと言われているんです。コモディティを分析するにはこういった連動性に注目すると、見えてくる世界が変わります。
小菅さん
小菅さん

※頂点に達すること。 また、そこから減少に転じること。

 

しな子
しな子
日本の商品先物取引員としてお伺いしますが、日本国内の商品先物取引への要望や思うことがございましたら教えてください。
商品先物取引の営業マンや、※デリバティブ投資家の教育をきちんとしてほしいとは思いますね。営業マンの中には「金や原油の知識しかない」という方も多いと思います。
そうすると営業マンが担当する投資家はそれしかやらなくなって、それ以外の市場が死んでしまいますよね。
小菅さん
小菅さん

※株式・金利・為替(かわせ)などの原証券や通貨売買の在来の取引法から派生した、新しい金融商品。

 

個人的に、先物で1番初めにやるべきなのは農作物だと思っているんです。
その中でも1番値動きが分かりやすいので、初心者にオススメなのはトウモロコシだと思います。
だからこそ、金や原油だけでなく色々な商品の知識を持ち合わせた営業マンの育成にはもっと力を注ぐべきですし、今後に少し危機感を感じています。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
アメリカと日本の商品先物取引の、当業者や機関投資家、個人投資家を比べた時に、
規模やイメージはどのように違いますか?
そもそも、日本とアメリカじゃ市場の規模が違いますよね。圧倒的に日本の市場は小さいです。海外ではコモディティ市場はもっと重要視されているように感じますね。
海外の※ヘッジファンドは、コモディティ出身という方は非常に多いんです。本来なら、日本でもコモディティがもっと重宝されてもいいと思いますが、市場が小さいのでそうはいかないのが現実です。
小菅さん
小菅さん

※投資家から資金を預かり、様々な金融商品を組み合わせてリターンを生み出すことを目的とした、運用のプロフェッショナル集団

 

コロナショックで原油のピークアウトが近づく可能性は大いにあります。

 

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しな子
しな子
今回のコロナショックについて、
市場を分析されている小菅さんはどのように感じておられますか?
正直言って、まいってます(笑)。というのも我々のような調査業をしているアナリストは、こういった暴落相場が起こったときには基本的に過去のデータをみるんです。
でも、今回のコロナショックは過去のどの相場の動きにも当てはまらなくって。
「誰もわからない」ということに恐怖は感じていますね。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
では今後のコモディティ市場で注目している商品は何でしょうか?
どれも面白いとは思うんですけど、今、この情勢だったら金ですね。
金は安全資産と言われますが、リスク全体の受け皿を担っているんです。
今回のコロナショックのような、先が読めない相場になったら、とりあえず金を買っとけってよく言われますよね。それは間違いないと思います。
小菅さん
小菅さん
あとは、原油ですね。間違いなくあと10年くらいで脱石油になると思うんですよ。
化石燃料の時代は終わって、石油市場はピークアウトを迎えると思います。しかし、今回のコロナショックによってその石油の寿命がグっと短くなって、最悪ここ数年でピークアウトを迎える可能性もあると思ってます。
小菅さん
小菅さん
もし本当にそうなったら、産油国は石油需要の低下にきちんと対応できるのか。
本来なら、石油から天然ガスに需要が移って、だんだん需要がなくなっていくはずが、コロナによって天然ガスを飛ばして急に需要がなくなってしまう…なんてことがあれば、産油国側の心配はありますよね。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
コロナショックによる原油の下落や金の高騰などによって、コモディティ市場が気になりはじめた投資家も少なくないと思います。そのような投資家が今後のコモディティ市場において気を付けるべきポイントはございますか?
コモディティ市場はトレンドがハッキリしやすいので、「そのトレンドに乗る」「上がっている相場を買う」ことが大事だと思います。我々のような商品アナリストは天井や底を狙って分析するんですけど、それに惑わされない方がいいかな、と思います(笑)。
小菅さん
小菅さん
やっぱり対象が現物なので、値段が下がったから減産しようとしても時間がかかるんです。逆に値段が上がったから増産をすぐにできるかといっても難しい面があります。長い目で見ないといけないので、思わぬ価格をつけてしまうことって結構あるんです。
今回の原油価格がマイナスをつけたのもそうですよね。だからトレンドに従ってトレードするのがいいかな、と個人的には思いますね。
小菅さん
小菅さん

 

私が目指しているのは「コモディティ市場の発展」です。

 

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しな子
しな子
近年、個人においても“資産運用の必要性”が謳われていますが、小菅さんの考える“資産運用の必要性”とは何でしょうか?
「労働の賃金の伸び率よりも、資本の伸び率の方が高い」。これはトマ・ピケティの「21世紀の資本」という本に書いてあることです。労働だけでお金を稼ぐのではなく、労働しつつ、投資でお金に働いてもらった方がいいですし、そういった意味で投資は必要だと思います。ただし、投資には、経験が必要です。退職金で初めて投資をしても、経験がなければ失敗してしまうんですよね。だから、やるなら若いうちからスタートするのがオススメです。

小菅さん
小菅さん
あと、投資は楽しいですよね(笑)。儲ける儲けないもありますが、私はそれが1番です。
投資をすることで見えてくる世界も変わりますし、何よりも楽しんで投資はするべきだと私は思います。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
では、資産運用をするなら、小菅さんの考えられる最強のポートフォリオは、どのような内訳でしょうか?
資産形成をするなら、ポートフォリオは、株がメインで、その何割かに金を組み入れるのが良いと思います。他の先物取引は、タイミングが合ったときにするほうがイイかなと思います。どちらかというと投機ですね。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
今後、小菅さんが新たに挑戦してみたいことや、今後の目標、夢を教えてください
私が目指しているのは、コモディティ市場の発展です。
業務的には、営業マン、個人投資家の育成に力を入れていきたいですね。
私が学んできたコモディティ市場の分析の仕方などを、次の世代に伝えていこうと思っています。長丁場にはなりますが、10年以内には実現したいですね。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
さいごに、商品先物取引をしている人や、商品先物取引が気になっている人に向けて
メッセージをお願いします。
これは、「楽しんでください」につきますね。色々な商品がありますが1つに絞る必要はないので、色々な商品を楽しんでもらえたらと思います。あとは、商品アナリストとして、需要、供給、在庫は必ず見て欲しいですね。
小菅さん
小菅さん
しな子
しな子
本日はありがとうございました!

 

小菅さんのお話をお聞きして、「コモディティ市場」の難しさ、そして面白さを身に沁みて感じました。コロナショックにより、ますます注目が集まるコモディティの世界に、これを機会に挑戦してみても面白いかもしれません!

 

マーケットエッジ株式会社 代表取締役社長/商品アナリスト 「小菅努」さんの

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しな子

総務部株式会社さくらインベスト
社会人2年目の23歳。保険・年金・資産運用などの金融知識については、まったくの初心者。“経済的に自立したカッコいい女性”になるために、金融リテラシーについて勉強中!

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